死は無である。

人間はいつか死を迎える。
その死はどのような形態となるかは分からない。
JRに乗っていれば死ぬかも知れないし ・・・
突然の発作で死ぬかも分からない。
いずれにしても死は避けられないものだ。

しかし死とは何か?
死とは「無」なのである。
経験から言えば ・・・
僕は首を吊って自殺を試みたが ・・・
そこには死は無かった。
気付いたらベッドに寝かされていただけだった。

首を吊ったまでは覚えている。
首を吊った瞬間は痛くも痒くもなかった。
ただ病苦から解放されたいという気持ちだけだった。
「死のう」と思って首を吊り ・・・
その時はただそれだけしか頭に無かった。

娘が僕を発見したのだと言う。
しかし僕にはまったく記憶の無いことだ。
救急車で病院まで運ばれたのだと言う。
それもまったく記憶に無い。
つまり僕は「無」の状態であったようなのだ。

脈拍数は10ほどだったらしい。
それも弟から聞いただけの話。
何もかも覚えていないのだから ・・・
やはり死は無であるとしか僕には思えない。

死とは無限の「無」が永遠に続くことらしい。
「睡眠」には朝がある。
しかし死には朝が無いのだ。
永遠に眠っているようなものだろうと思う。
僕には何の記憶も無いからそう思える。
とにかく気がついたら病院のベッドの上だった。

結論として言えることは「死=無」である。
たしかに「死ぬ前」はつらいだろうし ・・・
とくにガン死のような場合には ・・・
かなりの苦痛を覚悟しなければならないだろう。
しかしその苦痛を越えればもう痛み消えて ・・・
永遠の眠りにつけるだろう。
永遠の眠りもまた「無」の世界なのである。

いつかはやって来る「死」 ・・・
それは最大の幸福に違い無いと僕は思っている。